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やすんごのギリシャ・イタリア紀行(その40)
ミケランジェロのピエタの比較
   
(ミケランジェロのピエタ比較)

 考えてみると、今回の旅行では、ミケランジェロが制作したピエタ像を3つも見たことになる。

 第一に、フィレンツェのアルカディア美術館でみた「パレストリーナのピエタ」である。第二に、フィレンツェのドゥオーモ付属美術館でみた「フィレンツェのピエタ」である。そして、この「ロンダニーニのピエタ」である。

 私は、過去にローマのバチカンで「サン・ピエトロのピエタ」も見ているから、ミケランジェロの作った4つのすべてのピエタを見たことになる。

 この4つのピエタを比べると、サン・ピエトロのピエタが一番若い時代(1498-1500)に作られ、多くの人にとって一番わかりやすい作品であると思う。聖母マリアの腕に死せるイエスが抱かれているという、ごく通常のテーマである。聖母マリアは、理想化された若い女性として表現されており、作品としても完成しており、非常に美しい。

 これが、次に作成されたフィレンツェのピエタ(1547)になると、イエスと聖母マリアのほかに、実際にイエスの死体を引き取ったニコデモとマグダラのマリアが加わり、4人の像になる。しかも、イエスの死体を引き上げる役割は、ニコデモに代わり、聖母マリアが右側にそしてマグダラのマリアが左側に配置されている。この4人というのも安定感のある構図である。自分の墓石にしようと考えて作られたと伝えられている。完成直前まで彫り込まれており、一部が事故で欠けたので放棄されたというように、完成度の高い作品となっている。

 その次の作品とされるパレストリーナのピエタ(1555)は、聖母マリアは登場せずに、ニコデモとマグダラのマリアの2人がイエスを支える構図になっている。このピエタは未完成であるため、人物の詳細ははっきりしていないため、キリストを引き上げている人物をニコデモではなく、マリアであるする説も有力である。しかし、みたところ、キリストを引き上げている人物は、ずきんをかぶっており、フィレンツェのピエタとの対比でみるかぎり、このずきんをかぶった人物は、聖母マリアというよりもニコデモと考えた方が適切であると思う。

 これが、最後に制作されたロンダニーニのピエタ(1559)になると、登場人物は聖母マリアとイエスの2人きりである。構図は、縦になり、上から聖母マリアが死せるイエスを引き上げる形になっている。イエスは大きく、聖母マリアはやや小さめである。このため、見方によっては、イエスが聖母マリアを背負うようにも見える。死人が生者を背負うというのは矛盾しているが、神であるイエスが、人類の代表のマリアを背負うと考えれば、人類救済の図という解釈も成り立つ。最晩年の作品であり、視力を失い手探りでノミをふるったとか、病に倒れる前日まで作業したと伝えられているように、彼の死生観が最も出た作品になっているのかも知れない。
 
 スフォルツェスコ城
 

(ピエタの意味)

 ピエタというのは、「哀れみ、慈悲」などを表すイタリア語だそうだ。処刑後の死んだイエスと聖母マリアが表現される絵画や彫刻をさすが、なぜ、これがテーマになるのか、非キリスト教徒である私から見ると不思議に思う。

 イエスは、処刑された後に復活という奇跡を起こして、自ら神の子であることを証明するわけであるから、死よりも「復活」の方が重要視されるべきではないかと門外漢の私は考えてしまうのである。どうせ復活するのなら、死の場面を強調して悲しむのはどうかとも思うからである。しかし、死がなければ復活もないわけだから、復活という奇跡を起こすための死であるという考え方もある。また、死自体の意味は、人類の原罪の贖罪としての「イエスの処刑」という意義であろう。

 ただ、サンピエトロのピエタにせよ、フィレンツェのピエタにせよ、墓標として使われることを想定した彫刻であるから、やはり死せるイエスを表現するのが一番適切と考えることもできる。

(最初の教会としての磔の3人)

 ゴルゴダの丘で、イエスが処刑された際に、盗人2も併せて処刑された。この盗賊2人とのやりとりが新約聖書にも残されている。この2人とのやりとりは、最初の教会とも呼ぶべき出来事であった。
 
 イエスと一緒に処刑されることになった盗人の一人ゲスタス(向かって左側)は、「神の子なら奇跡を起こして死刑から救って見せよ」とうそぶいたという。死ぬことより生きることの方が重要という当たり前の考え方だと思うが、彼は地獄に堕ちた。しかし、もう一人の盗賊ディスマス(向かって右側)はこのゲスタスの発言をたしなめたことにより、イエスと一緒に天国に召された。盗人が救われて、聖人となったのだから、非常に興味深い話だ。


 

 
 
   
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